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新宿鮫

第1作目「新宿鮫」書影

吉川英治文学新人賞
日本推理作家協会賞受賞
1990年9月刊行

鮫の伝説、ここに始まる

記念すべき第一作だが、発想は単純だった。主人公がかっこよく、一読すかっとする小説。それを荒唐無稽に思わせないのが、全国26万人の警察官のトップ500人のキャリアの一人なのに、自己の信念のため、新宿署防犯課(のちに生活安全課)の一課員として任務に励む鮫島の設定だ。恋人の晶をはじめ、仙田以外のレギュラー陣が早くも顔を揃える。

物語

連続警官射殺事件に色めきたつ新宿。改造銃作りの名人・木津の“作品”が使われていると鮫島はにらむ。容易に姿を見せない木津をついに捕捉したとき、鮫島自身に大きな危機が迫っていた。さらに、すでに売られた改造銃が次に狙う標的は……?

ここが凄い!

勇者だけが美女を得る という古典的サーガに、現代新宿を舞台に新たな息吹きが吹き込まれた。

刊行時の内容紹介

あらゆる欲望を凝縮した街・新宿。この街の悪にひとり立ち向かう刑事・鮫島。犯罪者たちは、怖れをこめ「新宿鮫」と呼ぶ。彼には苦い過去があった。彼の孤独な闘いの傷を癒してくれるのは、恋人のロックシンガー・晶だけだ。新宿で、警官射殺事件が発生。そのとき、鮫島は銃密造の天才・木津を追っていた。連続する警官殺しに沸騰する署内で、木津にこだわり孤立する鮫島。しかし彼は、ある理由で執拗に木津を追う。一転、二転、鮫島に仕掛けられた罠が……! 男の誇りと涙! 男の愛と友情! 非情な世界と、現代の男を感動的に描破した、著者入魂の傑作長編、七年ぶりの書き下ろしで登場!!

刊行時の「著者のことば」

 ここ数年に刊行した作品の中でも、本書はいくつかの点で、私にとって特に印象深いものとなった。まず、現役の警察官を主人公にすえている。第二に、これまであまり書き込むことのなかった街、新宿を舞台にしている。第三に七年ぶりの書下ろしである。
 書き上げたとき、「いつも、こうあれば……」と、自分に問いたくなった。これまで私の読者でいてくれた方にはもちろんだが、そうでなかった方にも、私という書き手を知っていただくために、ぜひ読んでいただきたい作品である。

謎の欧文

The Saint In Sodom
ソドムは旧約聖書「創世記」に登場する都市。邪悪なその都市は、神の火に焼かれ滅びる。現代のソドム・新宿の街で独り闘う鮫島の姿に、決して何者にも怯まぬ「聖者」が重なる。

毒猿 新宿鮫Ⅱ

第2作目「毒猿」書影

1991年8月刊行

全身が凶器、シリーズ最強の敵役

当初一作きりのつもりだった『新宿鮫』だが、執筆中にこの第二作の構想が浮かんだ、まさに書きたくて書いた作品。鮫島が出会った生涯最強の相手“毒猿”。その旧友の刑事が、台湾から彼を追って来ている。鮫島を含め、国籍を超えた男たちの友情と対決、報われない愛に生きる女の純情が、国際犯罪都市と化してきた新宿の一面をあぶり出す。

物語

殺し屋・毒猿が来日したのは、彼を裏切った依頼人に報復するためだ。彼を追う郭刑事と鮫島は友情を結ぶ。一方、日中混血のホステス奈美は、毒猿の正体に感づきながら心ひかれはじめる。だが愛も友情も、新宿御苑での一大抗争に散ってゆく。

ここが凄い!

アクション度はシリーズ随一だが、ラストシーンのロマンティシズムが絶妙の隠し味になっている。

刊行時の内容紹介

新宿署の刑事・鮫島は、悪を憎み容赦しない。孤独に、誇り高く戦う彼を、犯罪者たちは「新宿鮫」と恐れる。歌舞伎町の女・奈美。哀しみと孤独が溢れる彼女の心に、光を与えた男がいた。謎の影を持つ男・楊だった。一方、鮫島は一人の台湾人に出会う。「ただものじゃない」鮫島に直感させ、刺客の急襲を一瞬で撃退した男・郭。彼には標的が──最高の殺人技術と、強靱な肉体を持つ台湾人の殺し屋、いや人間凶器「毒猿」だ。疾走する毒猿に新宿が戦慄! 郭の目的は? 奈美の運命は? 鮫島、絶体絶命の戦いに挑む! 圧倒的な興奮と感動が凝集! 「吉川英治文学新人賞」「日本推理作家協会賞」受賞第一作、読書界熱望の渾身書下ろし傑作!

刊行時の「著者のことば」

 前作『新宿鮫』は、望外の好評で迎えられた。小説を書いてきてよかった、としみじみ思った。鮫島は、あの日から、ひとりで歩きはじめた。
 今、二作目をだすにあたり、前作のときと何らかわらない期待と不安を感じている。この作品にとりかかるとき、何かひとつ、『新宿鮫』をうわまわるものを与えたい、と願った。与えられた、と思う。それでも不安は大きい。きっと、不安とは、作品に打ち込んだ著者の思いと比例して、ふくれあがっていくものなのだろう。

謎の欧文

Dú Yúan
毒猿の北京語読み。完璧な「殺人兇手」の名は、凄みに溢れた“音”で耳を震わせる。

屍蘭 新宿鮫Ⅲ

第3作目「屍蘭」書影

1993年3月刊行

「あの鮫島という刑事を殺そうか」

夕食の惣菜に少しでも安いものを選ぶような気軽さで、殺人を実行する49歳の看護婦ふみ枝。シリーズ3番目の敵役は最も非力、それだけに不気味な心の闇をのぞかせる。ふみ枝の献身を受ける超高級エステの女経営者の業も深く、みずからの分身が眠りつづける病室を蘭で埋め尽くす。その蘭の海に鮫島は踏み込む。

物語

コールガールの元締め殺し捜査に助っ人する鮫島は産婦人科クリニックに行き着く。鮫島の動きを封じるように故買屋からの収賄、さらに故買屋殺しの冤罪が降りかかる。だが真の恐怖はその奥の、芳香が腐臭に変わりそうな花園に隠されていた。

ここが凄い!

猛獣もどきの強敵にはひるまない鮫島が、つるのように絡みつく植物的犯罪者の罠をいかに切り抜けるか。

刊行時の内容紹介

孤高の新宿署刑事・鮫島──犯罪者たちは「新宿鮫」と恐れる。新宿の高級娼婦の元締め・浜倉が殺された。女たちを守るため身体をはった浜倉に何が? 容赦なく目的を遂行していく殺人者。鮫島は、懸命に事件に食らいつく。浮かび上がる産婦人科医「釜石クリニック」。そこは呪われた犯罪の、そして綾香、ふみ枝、あかね、三人の女の過去への入り口だった。事件に迫る鮫島に突然、汚職、殺人の容疑が。さらに敵は完璧な罠で鮫島を追い詰める。息詰まる興奮、震える感動──女たちが、男たちが、破滅の運命に操られていく!! 熱い声援に応える傑作長編、超人気シリーズ第三弾遂に登場!

刊行時の「著者のことば」

 よい意味で、読者を裏切りつづけたいと願っている。
シリーズであるからには、登場人物などの重複はさけられない。が、一作、一作、新しい世界を拓くつもりでのぞんできた。
 そのことが、物書きとしての私の運命を大きくかえた『新宿鮫』への、常の想いだ。
 前作からしばらくのあいだがあいた。しかしかけただけの時間に見合う思いは、作品の中に、ある。

謎の欧文

Necrophilic Orchid
「死体嗜好症の蘭」。死体のように眠りつづける彼女の病室に捧げられた蘭の花の群れは、彼女を愛おしむように美しく咲いている。

無間人形 新宿鮫Ⅳ

第4作目「無間人形」書影

直木賞受賞
1993年10月刊行

しゃぶは脳を侵す。鮫島が最も憎むもののひとつだ

新顔の悪役の創造だけでは、やがて縮小再生産になってしまう。新しい敵役は人間よりも、若者たちを蝕む新型覚せい剤アイスキャンディ。その利権を争う、丸ごと乗っ取りを企む新宿のやくざ、製造元である地方財閥の兄弟、その地元の不良ども。そこへ地方巡業に出かけた晶が鮫島の恋人と知られて人質に。自身のために晶が危機に落ちた鮫島の苦闘!

物語

麻薬を追う鮫島の前に立ちふさがるのは売人側でなく麻薬取締官。今度は藤野組の角から探りを入れるが、角は卸し元の香川財閥の兄弟を手玉に取るほどの切れ者だ。だが香川の弟自身、覚せい剤中毒の無間地獄に陥り、凄惨なフィナーレの幕が開く。

ここが凄い!

本書で直木賞受賞、読者をさらに増やしたように、新宿署の一署員が東京外へも活躍の場を広げてゆく。

刊行時の内容紹介

「新宿鮫」──新宿署刑事・鮫島を、犯罪者たちは恐れをこめてこう呼ぶ。覚せい剤、人間を蝕む戦慄の薬。新宿に、舐めるだけで効く危険な新型が。密造犯は、財閥・香川家の昇・進兄弟だった。流行する薬を狙う藤野組・角の巧妙な罠で、弟・進が覚せい剤地獄に。しかも事件に隠された哀しい秘密を、さらに狙う者が!? 一方、薬を激しく憎む鮫島は、懸命に密売ルートを探る。が、次々に手掛かりを絶たれ、麻薬取締官からは露骨な妨害! 苦闘する鮫島に兄・進の脅迫……暴走する進を角から救えというのだ。昇の手には鮫島の恋人・晶!? 名実共に現代を代表する超人気シリーズ第四弾、第百十回直木賞受賞の感動巨編。カッパ・ノベルス版で待望の登場!!

刊行時の「著者のことば」

 またしても「新宿鮫」は、私の人生を大きくかえた。このシリーズでなおも賞をいただけるとは、正直思ってもいなかったことである。
 幸運は幸運として、読者に対するスタンスは、今後もかえるつもりはない。「新宿鮫」は、私という「モノカ木」の大きな幹となった。その幹を、これからもさらにのばし、太くしていきたいと願っている。

謎の欧文

Poisoning Doll
「毒に侵された人形」。中毒者の意思を奪い、人形を操るよう薬物の強烈な邪悪さはまさに「毒」。

炎蛹 新宿鮫Ⅴ

第5作目「炎蛹」書影

1995年10月刊行

春になれば爆発する 自然界の時限爆弾を捜せ

イラン人家電窃盗団を率いる日系ブラジル人ロベルト・村上こと仙田勝が初登場。一方、新宿に放火事件が頻発する。しかし最も恐るべきは、被害者の南米女性が持ち込んだ縁起物のワラ細工。それにびっしりついた赤い繭が羽化すれば日本のイネを壊滅させるのだ。正統的捜査小説の形式ながら、「新宿鮫シリーズ」にパニック小説的魅力をつけ加えた。

物語

窃盗団、放火犯、連続殺人犯……犯罪見本市の新宿でも初耳の凶悪犯フラメウス・プーパ。植物検疫官・甲屋公典は、日本の農業に壊滅的打撃を与えるこの害虫を捜して、鮫島と臨時コンビを組んで新宿の雑踏へ。

ここが凄い!

魅力的な脇役は味方側にもいて、虫屋を自称する甲屋も一作限りとは惜しい存在。仙田の正体も気になる。

刊行時の内容紹介

新宿署刑事・鮫島──犯罪者は、恐れを込めて呼ぶ、「新宿鮫」と。連続殺人の犠牲となった外国人娼婦の部屋、植物防疫官・甲屋は、突然、鮫島の前に現われた。彼は、殺された娼婦によって南米から日本に侵入した、“恐怖の害虫”の蛹を追っていた。しかし、蛹は消えていた。羽化まで数日。蛹を追って、鮫島と甲屋は、危険と罠に満ちた戦慄の闇に挑む! 一方、連続放火の頻発。チャイナ・マフィアvs.イラン・マフィアの対立の激化。絡み合い、錯綜する犯罪と凶悪事件は、冬の終わりの新宿に凝縮する。鮫島に、刻々とタイム・リミットが迫る。
熱く闘う男たちがここにいる。興奮と感動! 圧倒する迫力! 全エネルギーを注いだ書下ろし傑作第五弾!!

刊行時の「著者のことば」

 四年ぶりの『新宿鮫』書き下ろしである。
長い夏休みのツケをたっぷりと払わされる羽目になってしまった。取材にも時間がかかった。
お待たせした理由は他にもある。が、いいわけを並べてみても始まらない。ただ、これだけはいっておこう。
お待たせしただけの思いは、作品に詰まっている、と。

謎の欧文

Flammeus Pūpa
作中の架空の昆虫の学名「フラメウス・プーパ」。学名を表記するラテン語で「火焔色の蛹」を意味する。

氷舞 新宿鮫Ⅵ

第6作目「氷舞」書影

1997年10月刊行

氷一枚下は地獄だ 鮫島に二重三重の呪縛が

西新宿のホテルで殺されたアメリカ人がコカインを持っていたため、生活安全課の鮫島も捜査に。しかし、介入してきた公安警察はふだん以上に強く鮫島を排除しようとする。被害者が元CIAだと教えてくれたのは『炎蛹』事件以後、姿をくらましていた仙田だった。第1作で鮫島と激しく対立した香田も警視正となって再登場。最後に鮫島に味方する者は誰か?

物語

晶を忘れて鮫島が心ひかれたのは、ひとり芝居のアーティスト杉田江見里。かつてないほど公安部が捜査に圧力をかけてきている現在、そんな余裕はあるのか、鮫島? 内憂外患での綱渡り、薄氷を歩む鮫島の闘争と恋の行方は?

ここが凄い!

江見里との仲を感づいた晶は鮫島のアパートの合鍵を返しに行く。刑事とロックシンガーの恋も終わりか?

刊行時の内容紹介

西新宿のホテルで元CIAの米人ブライドが殺され、新宿署刑事・鮫島の追う日系コロンビア人・ハギモリが消えた。事件の鍵を握る平出組の前岡に迫る鮫島。しかし、事件に関わるすべてが、なぜか迅速強固な公安警察の壁で閉ざされる。その背後には元公安秘密刑事・立花の影が。捜査の過程で鮫島は、美しく、孤独な女・杉田江見里と出逢う。その鮫島を幾重にも襲う絶体絶命の危機!!血と密謀にまみれた立花が守る、公安の奥深くに隠された秘密とは? ラストに絶望と至福が、鮫島を、江見里を、そして読者を待ち受ける。二年ぶり待望のシリーズ第6弾、新たなる興奮と感動のページが開かれる!

刊行時の「著者のことば」

 八年間で六作目の「新宿鮫」である。前作からまた二年ものあいだがあいてしまった。
毎回書き始めるたびに、やれやれしんどい仕事だなと思い、書き終えたときには、さて今度はどうなるやらと不安に感じる。書いている時間は、あとから考えれば一瞬に過ぎている。
 濃い話、を書いた。その実感は残っている。それが消えぬうちに次作に取りかかる、というのは、夢のまた夢、だろう。

謎の欧文

Le Dernier pas de Deux
「二人で踊る最後の踊り」という意味。峻烈さと切なさが同居する、運命的な二人の出会いと別れをイメージ。

灰夜 新宿鮫Ⅶ

第7作目「灰夜」書影

2001年2月刊行

著者の原点の還った 正統派ハードボイルド

鮫島が警察を追い払われないのは、公安部の派閥争いに巻き込まれて自殺した同期キャリア宮本の遺書を切り札に握っているからだ。その宮本の故郷を七回忌で訪れた鮫島は、何者かに襲われ、警察手帳も奪われて徒手空拳の闘いを強いられる。桃井課長や藪の援軍もなく、腐敗し、敵も味方も分からない街を歩む本書の鮫島は、むしろ私立探偵だ。シリーズの異色編。

物語

気絶から目覚めた鮫島は、頑丈な檻の中に閉じ込められていた。思い起こせば、宮本の旧友古山も、その妹のバーのマダムも、いわくありげだった。つかのま触れ合っただけの古山への友情から、見知らぬ街で鮫島は正体不明の敵に挑む。

ここが凄い!

第1作以来の宮本の遺書の謎が解けるかと期待するとNG。頭脳戦に傾いてきたシリーズ久々の痛快編。

刊行時の内容紹介

冷たい闇の底、目覚めた檻の中で、鮫島の孤独な戦いが始まった──。自殺した同僚・宮本の故郷での七回忌で、宮本の旧友・古山と会った新宿署の刑事・鮫島に、麻薬取締官・寺澤の接触が。ある特殊な覚せい剤密輸ルートの件で古山を捜査中だという。深夜、寺澤の連絡を待つ鮫島に突然の襲撃、拉致監禁。無気味な巨漢の脅迫の後、解放された鮫島。だが代わりに古山が監禁され、寺澤も行方不明に。理不尽な暴力で圧倒する凶悪な敵、警察すら頼れぬ見知らぬ街、底知れぬ力の影が交錯する最悪の状況下、鮫島の熱い怒りが弾ける。男の誇りと友情を濃密に鮮烈に描く超人気シリーズ第七弾!

刊行時の「著者のことば」

 八作目の『新宿鮫』だが、事件発生の順から、『新宿鮫Ⅶ』となる。前作とは異なり、内容的にもタフな物語になった。しかも、レギュラーの登場人物は、鮫島以外はひとりも現われない。舞台も始めから最後まで東京ではない。
 鮫でこんな作品を書くとは思わなかった。果たして読者の目にはどう映るだろうか。

謎の欧文

Jae Bam
タイトルをハングルで読み、英語表記にしたもの。小さな街で起こる国際的な事件を「海の向こうの当事者」の言葉で。

風化水脈 新宿鮫Ⅷ

第8作目「風化水脈」書影

2002年3月刊行

かつての淀橋浄水場 歴史の重みが現代に復讐

発表順では第7作だが、『灰夜』で中断された自動車窃盗団事件は本書で解決する。第1作で鮫島と心を通じ合った藤野組の真壁も出所し、ひとつの決着を見る。だが最大の特徴は、事件よりも新宿の街そのものと歴史がテーマになっていることだ。派手なアクションこそないが、街の歴史に埋もれた住民の哀歓、宿命の摂理が胸に迫るおとな向け大作。

物語

窃盗団を追う鮫島は、盗難車を塗り替える洗い場とにらんだ有蓋駐車場を張り込む。その番人の大江老人は鮫島の知らない新宿史を語って聞かせる。だが、大江は何かを隠しており、本当は敵の回し者ではないのか。意外なところで仙田も顔を出す。

ここが凄い!

常に現代の最先端を描いてきたシリーズが、あえて過去を顧みて醸し出す重厚さ。人々の運命も泣かせる。

刊行時の内容紹介

新宿署の刑事・鮫島は新宿で真壁と出会った。かつて殺人傷害事件で鮫島に自首した藤野組組員。出所したての真壁は待っていた女・雪絵と暮していた。だが真壁が命がけで殺そうとした男・王は、藤野組と組む中国人組織のボスとなっていた。やくざの生き方にこだわる爆発寸前の真壁と、幸せを希う雪絵。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、張り込み先で老人・大江と知り合う。街の片隅で孤独に生きる大江に秘密の匂いを嗅ぐ鮫島。捜査を続ける鮫島は、事件と藤野組の関わりを掴む。さらに潜入した古家で意外な発見を──。すべての糸はやがて一点で凝集する。過去に縛られた様々な思いが、街を流れる時の中で交錯する。心打つ、感動の第八作。

刊行時の「著者のことば」

 東京、ことに新宿ほど、多くの人々によって語られている街はないだろう。歴史における奇妙な符合があり、また「退廃」という言葉ではくくりきれないような、新しい文化や風俗を生みだし、今なお作りつづけている、“現役”にして日本最大の盛り場が新宿である。
「新宿鮫」というシリーズを書いていながら、主要舞台であるその新宿について、いったい自分はどれだけ知っているのだろう、ふと顧みたことが、この作品を書くきっかけだった。

謎の欧文

The Adipocerous Vein Of Water
veinには「水脈」と「静脈」という意味がある。二つの意味を重ね、屍蝋(Adipocere)化しながら静かに生きている命と水の流れをイメージ。

狼花 新宿鮫Ⅸ

第9作目「狼花」書影

日本冒険小説協会大賞受賞
2006年9月刊行

毒をもって毒を制す 上層部の専横に怒り爆発

謎に包まれた鮫島の宿敵・仙田が新宿に帰ってきた! 虐げられたじゃぱゆきさんから出世の階段を昇るニューヒロイン明蘭。仙田が選んだ明蘭は、しかし、巨大暴力団「稜知会」の幹部毛利にひかれてゆく。その稜知会を利用し、外国人犯罪を一掃しようとするのは、鮫島の内なる敵・香田警視正。敵と味方、男と女、複雑な愛憎が激突する壮絶なラスト!

物語

鮫島が探り当てたのは、精巧なシステムをもつ盗品マーケット。その背後に仙田、そして稜知会の影が見える。だが香田の圧力で捜査を阻まれた鮫島は絶体絶命の窮地に。一方、仙田も進退きわまってくる。鮫島の敵は上級警察官、味方は犯罪者……?

ここが凄い!

ついにあばかれる仙田の正体。追いつめられた仙田の銃口は鮫島の胸に。男たち各自の価値観がぶつかり炸裂する。

刊行時の内容紹介

地獄を覗かされ、日本を捨てた国際犯罪者・仙田。外国人犯罪を撲滅するため、限界を超えようとするエリート警官・香田。どん底からすべてを手に入れようとする不法滞在の中国人女性・明蘭。自ら退路を断ち突き進む男女の思惑と野望が一気に発火点に到達した時、孤高の刑事・鮫島が選ばざるを得ない「究極の決断」とは?理想と現実、信念と絶望、個人と社会、正義の意味、そしてこの国のありようが、骨太かつスピーディな物語に溶解していく。ターニングポイントとなるシリーズ最大の問題傑作、光文社初のハードカバーで登場!

刊行時の「著者のことば」

 九作目の『新宿鮫』がカッパ・ノベルスからお目見得することとなった。長くシリーズがつづくと、ときおり読者の方から「一作目から読まなくてはならないのですか」という、質問を受ける。そんなことはありませんよ、と私は答えている。どの作品から読んでも、物語に入っていける造りを心がけているからだ。
 が、登場人物によっては、過去の物語を背負った者がいる。それを知れば、さらに楽しんでいただける筈だ。

謎の欧文

Um Lobisomem
ポルトガル語で「人狼」。秘めたる野望を叶えるために貪欲に突き進むヒロインの姿を重ねた。

絆回廊 新宿鮫Ⅹ

第10作目「絆回廊」書影

2011年6月刊行

「拳銃(チャカ)は手に入るのか。お巡りを殺すんだ」

前作で鮫島の宿敵・仙田は消え、鮫島を邪魔者扱いしてきた香田も警察を去った。だが彼の闘いが終わることはない。20年以上の服役期間、ある警察官への殺意をたぎらせてきた身長2メートル近い大男が出所、新宿の街に出没。一方、恋人・晶がヴォーカルのバンド「フーズ・ハニイ」に薬物疑惑が。天職ともいうべき刑事を辞めるか、恋人を採るかの選択を迫られた鮫島は、公私ともに人生最大の危機に直面する。

物語

前門の虎、後門の狼
警察官を射殺すると宣言した大男の正体を探りつづける鮫島は、謎の先鋭的犯罪集団「金石(ジンシ)」に襲われた。大男の去就と「金石」はどう絡んでいるのか。日本、中国、カンボジア――歳月も22年の時空にまたがる宿縁は、新宿歌舞伎町の小さなバー松毬(マツカサ)で緊迫した舞台劇のようなクライマックスで幕を閉じる。

ここが凄い!

娑婆(しゃば)に帰って来ない男を22年、歌舞伎町で待ち続けたトシミの一途さが、事態をさらに混迷させる。鮫島を取り巻く環境も大きく転回してゆくことに。

刊行時の内容紹介

「警官を殺す」と息巻く大男の消息を鮫島が追うと、ある犯罪集団の存在が浮かび上がる。中国残留孤児二世らで組織される「金石」は、日本人と中国人、二つの顔を使い分け、その正体を明かすことなく社会に紛れ込んでいた。謎に覆われた「金石」に迫る鮫島に危機が! 二十年以上の服役から帰還した大男が、新宿に「因縁」を呼び寄せ、血と硝煙の波紋を引き起こす!

刊行時の「著者のことば」

 この作品の連載中、東日本大震災が日本を襲った。現実の、たいへんな数の死を前に、架空の死を描くことに、私は迷った。が、結局は書きつづけた。やがて、「絆」という言葉が溢れ、単行本化する際に、同じタイトルでいくべきかにも迷った。
書きつづけたのと同じく、タイトルも変えなかった。多くの点で、私にとって特別な意味を持つ作品となった。

謎の欧文

O Gios Tou Vasilia
ギリシア語で「王の息子」。一匹狼の荒くれ男の息子は、父を知らずに育ち、沈着冷静な国際的犯罪者となり、父と会うために新宿へやってきた。

短編集「鮫島の貌」

短編集「鮫島の貌」書影

2012年1月刊行

シリーズ長編は基本的に鮫島の三人称一視点なので、彼の外見などはよく分からない。ロックシンガー晶との関係以外の私生活、生い立ちもほとんど不詳だった。唯一の短編集である本書も全10編の半数は鮫島視点だが、交互に配された5編では桃井課長や晶、1作限りの鮫島の高校の同級生らが語る意外な一面が垣間見え、見逃せない鮫読本でもある。

謎の欧文

The Haunt
英語で「根城」「生息地」。犯罪の匂いが立ちこめたとき、誰かが困難に陥ったとき、鮫島は必ずそこに現れる。なぜならばそこが鮫島の「生息地」だからだ。