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<300冊記念>読者への感謝のしおり
写真の全体を公開!

『陰流苗木 芋洗河岸(1)』のしおりには、表面に、椅子に腰かけた佐伯泰英さんのポートレイト、裏面には、色鮮やかなフルーツを天秤棒で運ぶ売り子の写真を使用していました。

 

しおりに使われた写真、どんな写真なの?、というお声にこたえまして、今回は、写真の全体を公開します!

表面のポートレイトは、熱海・惜櫟荘での一枚です(惜櫟荘について、くわしくは佐伯さんのご著書『惜櫟荘だより』をお読みください)。
佐伯さんの目線の先、正面の壁にかかるのは、かつて惜櫟荘を訪れたポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダの筆による絵画です。
ワイダ監督は、惜櫟荘から見える庭の木々と太平洋の風景に感銘を受けて、スケッチを残したものと推察されます。
その絵は横長ですが、まるで屏風のように、3つの画面に分割された構成になっています。世界的な映画監督は、もしかして、カメラを回すなら――、などと考えていたのだろうか、と想像が膨らみます。
じつはこの絵、「芋洗河岸」シリーズのカバーデザインのヒントのひとつになりました。
「3冊のカバーを並べてひとつの画像になる」、デザイナー髙林昭太さんとのお話し合いの中で、この絵のことをほんの少し参考にしました。

左手前にあるのは、京都・祇園のお正月にかかせない福玉と餅花だそうです。福玉は、暮れに、お茶屋から舞妓さんたちがいただいたり、御贔屓やお馴染みのお客様からいただくものだそうです。この福玉を年明けに開けると、中からさまざまな縁起物が出てくるのだとか。
餅花は、紅白の御餅を、お花のように枝につけたお飾り。祇園町の軒先などに飾られるそうです。
お正月の京都に訪れた際には、「ああ、これが……」と眺めてみてください。

裏面は、どこの国の風景でしょうか。ヒントはやはり、売り子の被る笠の形ですよね。
そして、写真全体を見れば、もっとわかりやすいはずです。たくさんのバイクが行き交う、これはもう――、
そう、ベトナムです!
2010年11月に、佐伯さんが首都ハノイで撮影されました。場所は、ドンキンギアトゥック広場(Quảng trường Đông Kinh Nghĩa Thục)。広場を見物しようと、建物上階のカフェのテラス席に上って、カメラを構えたところの1枚だそうです。
この広場は週末の夜は歩行者天国になり、ナイトマーケットも開かれるハノイのランドマークと言われる広場なのだとか。
佐伯さんの思い出によると、このとき、とあるウォッカメーカーが自社製品の絶賛プロモーション中で店内はお酒臭く、プロモーションガールと浮かれた酔っ払いに溢れていたとのこと。しおりになったときに受けるイメージとの違いが、とても面白いです。
こちらの写真、しおりにする候補写真をいただいた中で、「切り取ったときの余白が面白い!」と編集部で大好評だったのを、佐伯さんに選んでいただきました。

写真の種明かし、いかがでしたでしょうか。
300冊記念のしおり、佐伯作品を愉しんでいただく際に、長くお使いいただけたら幸いです。

『恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六)』のしおりについては、文藝春秋の特設サイトで公開中です! 
先に公開していた「しおり制作の舞台裏」はこちらから。
ぜひあわせてお読みください。